ポニポニピープル Dialogue 002 鶴岡章吾

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うずうずマインのデザイン

菊地玄摩 他に「にんげんフェスティバル」の思い出はありますか。僕はうずうずマインの会場に、鶴岡さんが大きく印刷したメインヴィジュアルを土壇場で設置してくれたことが、すごく印象に残っています。今まで組み立ててきたものの延長に、あの空間にはこれが必要だ、と直感してのことだと思います。そういう行動がいい結果につながるチームにいるなんて、すごく面白いというか、やりがいがありますよ。フェスティバル前夜はそこにいなかったので、後でそのことを知りましたけど。

鶴岡章吾 本当にスケジュールがギリギリで、実際の会場の様子を全然つかめていませんでした。ここまで作ってきたビジュアルの流れを汲んで、フェスティバルとして会場を盛り上げることと、会場が広範囲に点在していたので、各会場の共通性を出すことがポイントでした。市外から来るお客さんも多いと思っていたので、ビジュアルが統一されていたほうが「今年のフェスティバルはこうなのか。来年のフェスティバルも参加したいな」という気持ちに繋がると思いました。話の内容は、結構硬いじゃないですか。もちろん皆さんの話し方で柔らかくなるとは思っていましたが、専門的で硬い話ではあるわけです。そこで、会場にカラフルで綺麗なメインビジュアルを置いて、フェスティバル感を出せば、参加者の人たちとスタッフの気持ちも乗ってくるだろうと考えました。

菊地玄摩 フェスティバルの各会場で、スタンプラリーをするとハコスコをもらえる企画がありました。それを5歳の子供と一緒に回ったのですがが、立て看板の前にあるフェスティバルのビジュアルから、子供の目線でもちゃんと「あった!」と場所を見つけることができていましたね。数百m四方の広範囲で、会場サインとして機能していました。それから、記録写真の背景にも写りこんでいましたね。さまざまなジャンルから招待されている登壇者たちの姿を横に繋げつつ、ちゃんと5歳の人の体験にも一役買っている。あのビジュアルがこれだけの仕事ができたのは、サイズや置き方の適切さによるところが大きいと思います。鶴岡さんは、そういう空間を作る作業を「にんげんフェスティバル」でやってくれたなという感じです。

鶴岡章吾 そう言っていただけると、すごく嬉しいですね。チームの中に入れたような心持ちです。

菊地玄摩 その後、一緒にした仕事に「うずうずマイン」のロゴがありますよね。

鶴岡章吾 難しかったですね。スタート段階では、今後どんなことが展開されるのかが不確定な状態でした。「うずうずマイン」の命名も含めて、どうしていくのか話し合いながら作っていったので、最初はどう表現すれば、あの場所が立ち上がって見えるのか、すごく悩みましたね。

菊地玄摩 どのくらい時間がかかったんでしたっけ。

鶴岡章吾 結構かかりましたね。
僕がメインで、3ヶ月ぐらいですね。

菊地玄摩 もっと長い感じがしていましたが、 3か月でしたか。サイン計画があったり、看板制作もあったので、コンセプトから現地に落とし込むまでの期間はもっと長かったかも知れませんね。

鶴岡章吾 最後まで入れると長かったですね。

菊地玄摩 「にんげんフェスティバル」にしても「うずうずマイン」にしても、関わる人達の想いを明確につかむのが難しいですね。その想いを立ち上がらせ、「見える」状態をどう作るかが難問です。さっきの話の、フェスティバルに参加した人が、フェスティバルがそこに「ある」と感じられる状況を作ることと似ています。うずうずマインは「うずうずマイン」としてそこに立っていて欲しい。そのためにいろいろな手法を使っているのですが、もしかしたら、それを追いかけるプロセス自体に、面白みがあるのかもしれません。こういうお話をテキストにすることで、そういう目に見えないプロセスが読めるようになるとよいなと思っています。最終結果だけだと、これを作ったのだなと思ってしまいそうですが、何を作るべきか見つけることがまず創造ですからね。何をやればいいのかわからない状態から始まってますから。

鶴岡章吾 「にんげんフェスティバル」もそうですが、プロセスが本当におもしろいですね。どこかフワッとした感じがあります。もちろん普段のクライアントとの仕事でも、ふわふわした状態で進むことはありますが、それとはまたちょっと違う感触です。目指す方向性さえ決まってないけれど、それぞれの思うところを話し合い、議論しながら、形作り、最終的にアウトプットをする。このプロセスで出た議論をグラフィックとしてアウトプットすると、そのグラフィックもまたプロセスに巻き込まれて、グラフィックと対話しているかのような手触りがありました。すごく面白かったです。

菊地玄摩 そうなんですよね。「うずうずマイン」の名前が生まれ、ロゴが形になり、ロゴの看板がビルにはまった姿を鶴岡さんがみんなに見せる。それが繰り返されることで、なぜか話が前に進みます。話を進めて形にするというより、形を投げ込むと話が進む感じですね。

鶴岡章吾 グラフィックを見ることで、「こういう考え方ができるよね」と話したり、「こういう思いも乗せたいよね」と意見がうまれる。これは普段の仕事とは、すこしニュアンスが違います。

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