ポニポニピープル Dialogue 002 鶴岡章吾

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ぽにぽに物質とにんげんマーク

鶴岡章吾 そうですね。僕も今年のビジュアルがどう変化するのか、個人的に期待しています。2022年は、質感が強調されたビジュアルでした。こんなビジュアルの見せ方があるのかと、衝撃を受けましたね。最終的に印刷物として刷るので、どうしても平面的になりがちですが、その中で立体感を出す手法はあまり用いたことがありませんでした。こうした発想は、どこから始まるのでしょうか。

菊地玄摩 僕は、映像とWebが専門で、グラフィックデザインの経験はあまり多くありません。動くものを前提として考えるプロセスが自分にとっては自然なのですが、グラフィックの考えとは、すこし違うのだと思います。

鶴岡章吾 その動きがランダムできっちり予測できない感じが、「にんげんフェスティバル」のテーマとしっくりくる部分がありますね。こうした発想はありませんでした。

菊地玄摩 少し変わった表現方法でなければ、ポニポニや「にんげんフェスティバル」は表現できないと思った、ということもありそうです。見る人の直感のレベルで、これはいつもと違う、日常を超えるものかも知れない、と思ってもらうためには、いつもと違うプロセスやアイディアが必要だと思います。凡庸なものをいじるのではなくて、根本から違うものを提示したいと思っていました。それを探す性が僕にはあるので、ポニポニではそういうところを買ってもらってるという気持ちはあります。一方でコントロールの難しいことに、鶴岡さんを巻き込んでしまったなとは思っています。

鶴岡章吾 すごく新鮮で楽しかったっすね。普段の仕事では、凡庸なものに少しだけエッセンスを足すぐらいが、一番求められることが多いです。クライアント仕事は、基本的にクライアントが伝えたいことをストレートに伝えることに尽きます。そのままだとストレートに伝わりにくいので、グラフィックを使って伝えやすくしたり、もっとインパクトを出したりしますが、どうしても説明の方に引っ張られて、「直感」できるかという観点が排除されがちです。

菊地玄摩 そうですね。シロノマ社の作ったデザインを受け取った依頼者が、自分の仕事に自信を持って営業ができるようになったエピソードには、鶴岡さんのこだわりを感じました。そういう気持ちになるためにはこれまでにない、新しいものが必要なのですが、日常から遠すぎるものに対しては、怖くて身構えてしまうものだと思います。その距離感を間違えて、ただの変なものになってしまわないよう調整することが、コミュニケーションを成り立たせる上ですごく大事です。心地よいポイントがありますから。ですが、社会の未来のあり方を考える時のように、今まで想像もしていなかったところに出ていくには、それをちょっと超えなければなりません。「にんげんフェスティバル」は、新しい可能性について考える場だと思うので、今いるところからもっと外側へ出ることがテーマです。その場合、心地よいだけではなくて、コミュニケーションを少し裏切らなければならないんですよね。福岡のデザイン事務所に入って、「ガッツリやっていくぞ」と、今の生活から外に出て行くときのような気持ちになってもらうには、どうすればいいか、というような話ですね。

鶴岡章吾 すごく刺激的でした。

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