ポニポニピープル Dialogue 001 竹本直樹 (2/6)

コロナ禍の挑戦で出会えた人々
~湯リイカ~

鶴岡章吾 どのような経緯で、本格的にポニポニと共同事業をされるようになったのですか。

竹本直樹 2021年に公益財団法人「JKA」の補助事業への申請が通った時に、ポニポニに相談したことがきっかけでした。この事業は、事業費に対して補助が出るのではなく、活動そのものに対して補助金が下りるというものでした。応募要件に「高齢者が暮らしやすいまちや社会づくり」という項目があり、「これこそまさしく今の大牟田にマッチしている事業じゃないか!」と思いました。補助事業申請を行なったところ、採択されたのです。

鶴岡章吾 なかなか採用されるのが難しそうな補助事業ですね。

竹本直樹 恥ずかしい話ですが、最初は採用されるとは思っていませんでした。今後、こういった事業を進めていくための練習のつもりで申請したのですが、採用されてしまいました。

鶴岡章吾 練習のつもりで申請したのに、それが採用されて、戸惑いませんでしたか?

竹本直樹 補助の金額が大きすぎて、どうすれば地域のために活用できるのかと、頭を悩ませました。
最初は大牟田の枠に捉われず、先進的な取り組みをしている地域への視察や、勉強会の開催を考えていました。ですが、ちょうどコロナ禍で移動制限がかかってしまい、全て取りやめになってしまいました。そこでポニポ二に「何か一緒にできませんか」と相談したのです。

鶴岡章吾 その時に、この予算を使って何をするのか、といった根本的な話をされたのですか?

竹本直樹 そうです。ここで出てきたのが「問いと対話のメディア 『湯リイカ』」です。

鶴岡章吾 この「湯リイカ」を作っていく中で、印象的なことや、難しかったことはありましたか?

竹本直樹 難しさは、あまりありませんでした。原口さんや山内さんたち、ポニポニのメンバーが今まで築き上げてきた知見と、有識者・実践者との繋がりを駆使して、半年ぐらいで作り上げましたね。この半年間ですごい情報量の議論があり、それを自分の中で処理するのが大変でした。

鶴岡章吾 僕も「湯リイカ」の動画を拝見しました。気持ちでわかる事柄と専門的な事柄が重なり合い、初めて聞いた時には、わかったような、わかっていないような印象を持ちました。でも、その後の生活のふとしたキッカケで、カチッとはまったかのように、理解できた時があったのです。すごいコンテンツだと思います。

竹本直樹 そう思います。問いの立て方や対話のやりかたを勉強し、この事業を通じていろいろなことを考えました。中でも大きかったのは、ゲストで来ていただいた有識者・実践者の方々(「湯リイカ」では親しみを込めて「ふろとも」と呼びます)と、ポニポニや大牟田の介護福祉領域で事業をしている私たちを含めた、みんながめざすゴールや目標のイメージが、完全なイコールではないものの、「ニアリーイコール」だという発見です。専門性は違えども、目指す方向性や大切にしたい考え方が同じであれば、仲間になれるという学びを得ました。私自身が、いろいろな職種の人たちと繋がったことに加え、ここで得た学びをコンテンツに込めて発信し、職員や地域内外の人たちに届けることができたことが、この事業の成果です。

鶴岡章吾 みんなの目標が「ニアリーイコール」だと感じたのは、具体的にどういう時ですか?

竹本直樹 私なりに言うと「暮らしの豊かさ」です。自分自身の価値観、つまり存在価値や存在意義が問われる時に、私たちは何をもってして幸せなのかを考えますね。一人一人が、幸福だと思う方向に向かっています。「ニアリーイコール」という言葉は、その人にはその人なりの目指す目標がある、という気づきに由来しています。それぞれの人が考える幸せは違うので、「ニア」なわけです。

鶴岡章吾 豊かになりたいと思い、前に進んでいるのは同じだけれど、目指す先の「豊かさ」はそれぞれ異なるということですか。

竹本直樹 そうです。

鶴岡章吾 「湯リイカ」の事業は、ひとまず1年間で終了なのでしょうか?

竹本直樹 「湯リイカ」のコンテンツ(動画)は、今でもYoutubeで見られますが、この事業は1年で終わりとなりました。ちょうど同時期、ポニポニと延寿苑は、市営住宅の事業(市営住宅リロケーション)に、別々に関わっていました。ですが、「湯リイカ」の事業をきっかけに距離がぐっと縮まって、一緒に取り組むことになったのです。

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